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2021.08.13
パチンコ業界で働いており、転職を考えている方の中で
「会社と同業他社に転職してはいけないという誓約書を交わしてしまったので、
業界内で転職できない…。」という方が少なからずいるのではないでしょうか?
今回はそのような場合でも、同業他社に転職が可能かどうかについてお話させて頂きます。
■会社が従業員と誓約書を結ぶ理由
会社は自分たちの情報を漏らしたくない為、社員に対して誓約書を結ばせます。
社員が外部に会社の情報を漏らさないようにする義務のことを
競業避止義務(きょうぎょうひしぎむ)と言います。
所属する会社と競合する会社に転職する、競合する会社を起業するなどして、
会社の情報(製品・商品の開発情報、技術情報、顧客名簿、営業ノウハウ等)を利用してはならない
という義務のことを競合避止義務といいます。
(引用:【弁護士監修】知らなきゃ損する!転職と仕事の法律お悩み相談室)
■誓約書の効力は?
では競業避止義務についての誓約書を交わしたのにもかかわらず、競合他社に転職した場合、
罰則を受けることはあるのでしょうか?
在職中の社員であれば、労働法で競業避止義務について明記されている為、
情報漏えいなどは処罰の対象になります。
労働契約法第3条第4項に「労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、
権利を行使し、及び義務を履行しなければならない」との定めがあり、
労働者が競業行為を差し控える義務があると解釈されています。
このため、労働者が競業行為を行えば、懲戒処分や損害賠償請求の対象になり、
場合によっては解雇事由にもなり得ます。
では、退職後も競業避止義務はついて回るのでしょうか?
基本的には退職後は誓約書に効力は生じず、無効になります。
日本国憲法第22条第1項では
「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と記載し、
「職業選択の自由」を認めています。
効力の強さは
日本国憲法>その他の法律(民法・刑法)、その他の規則
ですので、誰もが転職先を自由に選択できる権利をもっています。
その為、誓約書にサインをしていたとしても、
罰則を受けることは基本的にない、ということになります。
■競業避止義務が認められる場合
憲法が職業選択の自由を認めている以上、
会社側は社員が退職後に情報を漏えいされても仕方がない、ということになってしまいます。
先ほどは「誓約書にサインをしていたとしても、罰則を受けることは“基本的に”ない」
とお伝えしましたが、例外はあります。
もし裁判になった場合、これまでの判例では以下の6つのポイントで
「競業避止義務の内容に合理性があったかどうか」を判断します。
職業選択の自由と比較し、競業避止義務契約の有効性があるかどうかが重要になります。
①守るべき企業の利益があるかどうか
競業避止義務契約等を導入してでも守るべき企業側の利益があるかが問われます。不正競争防止法によって明確に法的保護の対象とされる「営業秘密」はもちろんのこと、
個別の判断において、「営業秘密」に準じて取り扱うことが妥当な情報やノウハウについても、
競業避止義務契約等を導入してでも守るべき企業側の利益と判断されているようです。
②従業員の地位
競業避止義務を課すことが必要な従業員であったかどうかが問われます。従業員の地位について判断を行なった判例では、形式的に特定の地位にあったかどうかよりも、
企業が守るべき利益を保護するために、競業避止義務を課すことが必要な従業員であったかどうかが
判断されていると考えられているようです。
③地域的な限定があるか
地域的限定について判断を行なっている判例は多くはないですが、争われている場合には業務の性質等に照らして合理的な絞込みがなされているかどうかという点が
問題とされているようです。
ただし、地理的な制限がないことのみをもって競業避止義務契約の有効性を否定しないという傾向も
あるようです。
④競業避止義務の存続期間
形式的に何年以内であれば認められるという訳ではなく、労働者の不利益の程度を考慮した上で、業種の特徴や企業の守るべき利益を保護する手段としての
合理性等が問われています。
近年の判例によると概ね、1年以内の期間については肯定的に捉えられている例が多く、
2年の競業避止義務期間について否定的に捉えている判例が見られるようです。
⑤禁止される競業行為の範囲
禁止される競業行為の範囲についても、企業側の守るべき利益との整合性が問われています。一般的・抽象的に競業企業への転職を禁止するような規定は合理性が認められないことが多い一方で、
禁止対象となる活動内容(たとえば在職中担当した顧客への営業活動)や
従事する職種等が限定されている場合には、有効性判断において肯定的に捉えられることが
多いようです。
⑥代償措置が講じられているか
競業避止義務を課すことの対価として明確に定義された代償措置が存在する例は少ないようですが、明確に定義された措置でなくても、代償措置(判例の中には賃金かが高額であれば、
代償措置があったとみなしている例もあります)と呼べるものが存在することについて、
肯定的に判断されているケースも少なくないようです。
過去には競業避止義務が認められた場合もある為、必ず職業選択の自由が優先される訳ではありません。
ただ、会社側が損害賠償請求するには、競業避止義務違反によって損害が発生したと
明確に証明する必要があり、その証明は簡単にできるものではありません。
また、裁判を起こすとなると時間と費用がかかる為、
会社に損害を与えない限り、会社側が競業避止義務を争って裁判を起こす可能性は低いと考えられます。
下記のサイトに競業避止義務の判例が掲載されておりますので、
ご興味のある方はご覧ください。
競業避止義務が問題になるのは、前職の会社に大きな損害が生まれ、
因果関係が認められた場合のみになる為、ほとんどの場合問題ありませんが、
不安な方は当社パチンコ転職ナビにご相談ください。
文責:梅沢